【行政手続法編】行政手続法の重要ポイントを解説【5分で解説シリーズ】

どうもみなさんこんにちは、Flybirdです。

行政手続法は、毎年決まって3問出題されますが、行政法の中では難易度も低めで得点も取りやすいので、確実に3問正解したいところです。

そこで本記事にて、行政書士試験の科目の行政手続法について解説していきます。

目次

「行政手続法」とは?

そもそも、行政手続法とは何か?ということですが、簡単に言うと、行政処分・行政指導などを実施する際に行政機関が踏むべきルールをまとめたものです。

例えば、「警察24時」のようなテレビ番組を思い出して頂きたいのですが、犯人を逮捕する(手錠をかける)際に、「●●時●●分、○○の罪で逮捕」って警察官が必ず言うと思います。理由としては、被疑者の人権の確保とか、のちに「○○の罪ではなかった」と主張できるようにするためなど、さまざまな意味があります。逮捕の場合は刑事手続になりますが、この、行政版に該当するものが「行政手続法」です。

行政法の根拠があり、処分を行うことができる場合でも、行政処分を受ける者の人権を侵害してはなりません。そのために行政処分をする際の具体的な手続を定めたものが、行政手続法です。

昨今の事例で言うと、時短営業に従わない飲食店に罰則を科する場合でも、定められた行政手続に則らなければならない、ということです。

学習のポイント:「条文暗記」が大事。

行政手続法では判例からの出題が少ないので、条文を確実に暗記できていれば、全問正解を目指せます。

条文暗記は難しそう…。と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、行政手続法は全部で46条しかありません。民法は約1000条あり、行政不服審査法でも87条あります。(行政事件訴訟法は同じく46条ですが、判例理解が必須となります。)

とにかく、条文をメインに学習しましょう。以下、学習すべきポイントを解説します。

ポイント①:どんな「行為」に、どの「手続」が必要となるか整理しましょう。

各行為と、必要な手続きについてをまとめてみるだけで、行政手続法の全体像が見えてきます。

行政機関等の実施する行為(定義の条文)必要な手続(条文)
申請に対する処分(2条3号)審査基準を定める(5条)など(5条~11条)
不利益処分(2条4号)処分基準を定める(12条)、聴聞or弁明の機会の付与の実施(13条)など(12条~31条)
行政指導(2条6号)趣旨・内容・責任者の明示(35条)など(32条~36条)
処分等の求め(36条の2 36条の3)申出書の提出(36条の2 36条の3)
命令等(2条8項)を定める(38条1項)意見公募手続の実施 など(38条~45条)

上記の図でカバーされていない条文は37条(届出)と46条(補則)だけです。

上の図からもわかる通り、覚えるべき行為類型は5つです。
手続きに関しては覚える条文が多いですが、大事なのは上記の図中で例示した事項です。

中でも、押さえるべき大事な条文について、以下解説します。

ポイント②:「行政機関の実施する行為」を正確に暗記しましょう。

中でも、条文(「2条」「36条の2」「36条の3」)が必然的に暗記すべき重要な条文といえます。
これらを以下解説していきます。

ⅰ 2条(用語の定義)

行政手続法で用いられる用語の定義を規定した条文です。

(定義)
第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。以下「規則」という。)をいう。
 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分
 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの
 行政機関 次に掲げる機関をいう。
 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項に規定する機関、国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関、会計検査院若しくはこれらに置かれる機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員
 地方公共団体の機関(議会を除く。)
 行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
 届出 行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)をいう
 命令等 内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。
 イ 法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。次条第二項において単に「命令」という。)又は規則
 ロ 審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
 ハ 処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)
 ニ 行政指導指針(同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。以下同じ。)

全て大事ですが、赤字でマークした部分(「処分」「申請」「不利益処分」「行政指導」「届出」「命令等(※その中身含む)」)の定義は完璧に暗記してください!

ⅱ 36条の2・36条の3(行政指導の求め)

行政指導の求めを定めた条文です。

第三十六条の二
法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。

 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
 当該行政指導の内容
 当該行政指導がその根拠とする法律の条項
 前号の条項に規定する要件
 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
 その他参考となる事項

 当該行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない。

第三十六条の三
何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。

 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
 法令に違反する事実の内容
 当該処分又は行政指導の内容
 当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項
 当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由
 その他参考となる事項

 当該行政庁又は行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。

誰がどういう場合にどういった請求をできるかどうかを整理しておきましょう。

※36条の2と36条の3とでは、「誰が」という部分が異なりますが、ほぼ同様の条文です。

ポイント③:手続規定は重要なものから暗記しましょう。

行政手続法なので当たり前ではありますが、覚えるべき手続規定が多いです。手間がかかりますが、重要な条文は5条、12条、13条、35条です。

ⅰ 5条(申請に対する処分)

「申請に対する処分」の審査基準を規定する条文です。

第五条
行政庁は、審査基準を定めるものとする。

 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない

e-Gov 法令検索

審査基準を定めることできる限り具体的なものとすること審査基準を公にすることが要求されています。これらは義務です。

ⅱ 12条(不利益処分)

「不利益処分」の処分基準を規定する条文です。

第十二条 
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。

 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

e-Gov 法令検索

処分基準を定めることできる限り具体的なものとすること処分を公にすることが要求されています。これらは「努力義務」です。

審査基準について、5条との共通点と相違点を確認しておきましょう。

ⅲ 13条(「聴聞」または「弁明の機会の付与」の実施に関する判断基準)

以下、簡単に聴聞と弁明の機会の付与の説明です。

  • 聴聞:審理方式で行われる少し厳格な手続
  • 弁明の機会の付与:基本的に書面の付与で行われる簡易な手続 

不利益処分が実施された際に、どちらの手続が実施されるか、振り分けの基準を規定しているのが13条です。

(不利益処分をしようとする場合の手続)
第十三条 行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
 次のいずれかに該当するとき 聴聞
 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
 イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
 イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき

 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の機会の付与

 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。
 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないとき。
 法令上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分であって、その資格の不存在又は喪失の事実が裁判所の判決書又は決定書、一定の職に就いたことを証する当該任命権者の書類その他の客観的な資料により直接証明されたものをしようとするとき。
 施設若しくは設備の設置、維持若しくは管理又は物の製造、販売その他の取扱いについて遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明確にされている場合において、専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足の事実が計測、実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき。
 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき。
 当該不利益処分の性質上、それによって課される義務の内容が著しく軽微なものであるため名あて人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを要しないものとして政令で定める処分をしようとするとき。

長いですが、マークをした部分は最低限覚えましょう。

ⅳ 35条(行政指導の方式)

行政指導の方式を定めた条文です。

第三十五条
行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。

 行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。
 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
 前号の条項に規定する要件
 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由

 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。

 前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの

「どういった場合」に「何を提示するのか」を整理しておきましょう。(なお、主体は「行政機関に携わる者」です。)

ポイント④:その他、細かい手続・方針の有無を理解する。

上記で説明した部分以外の、細かい条文部分を覚えていきましょう。

ⅰ 「申請に対する処分」を行う上で必要な手続(6条~11条)

その他の手続が6条~11条に記載されておりますので、頑張って覚えましょう。

大事なのは、「義務」なのか「努力義務」なのか、という部分です。
語尾が「~しなければならない」となっているか、「努める」となっているか、注意して読んでいきましょう。

ⅱ 「不利益処分」を行う上で必要な手続(14条~31条)

その他の手続が14条~31条に記載されております。
一番量が多い部分ですが、頑張って覚えるしかないです。

なお、行政書士試験の行政手続法は、対比問題がよく出題されます。(ex. 聴聞では必要とされるが、弁明の機会の付与の際は必要とされない手続は?)
そのため、準用条文の31条の理解が重要となります。

(聴聞に関する手続の準用)
第三十一条
第十五条第三項及び第十六条の規定は、弁明の機会の付与について準用する。この場合において、第十五条第三項中「第一項」とあるのは「第三十条」と、「同項第三号及び第四号」とあるのは「同条第三号」と、第十六条第一項中「前条第一項」とあるのは「第三十条」と、「同条第三項後段」とあるのは「第三十一条において準用する第十五条第三項後段」と読み替えるものとする。

15条3項はいわゆる「公示送達」、16条は いわゆる「代理人の選任OKの旨」を定めたものです。これらのみ聴聞と同様の手続となるということを覚えておいてください。

ⅲ 行政指導の方針を定めた規定(32条~34条、36条)

行政指導の重要条文は第35条です。その他の第32条・33条・34条・36条については、建前の規定した条文なので、重要度は高くありませんが、条文の内容は確認しておきましょう。

ⅳ 「命令等」を定める際の手続(38条~45条)

意見公募手続の規定も出題頻度が高いです。全体的に多く出題されますので、特定の条文が大事というわけではないです。ここでも、「義務」「努力義務」の違いに注意して学習しましょう。

まとめ:暗記したもの勝ちなので、できれば全問正解を目指しましょう。

いかがでしたでしょうか。
まずは全体像を掴んだうえで、重要な条文からつぶしていきましょう。

行政手続法は暗記すれば確実に得点できる科目ですので、全問正解を目指しましょう!
本記事が少しでも皆さんの役に立ちますと幸いでございます。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。よろしければ、他の行政法の「5分で解説シリーズ」もご覧ください。

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